特別連載ブログ フィルムカメラのある生活

2018.04.21

オールドレンズ入門に最適なロシアレンズ「ジュピター」(Jupiter)まとめ

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Jupiter-8

ミラーレス一眼カメラでオールドレンズを楽しむときに、手頃な値段で切れ味鋭い描写が楽しめるロシアレンズ。

ロシアレンズのなかでも、とくにおすすめなのが「ジュピター」(Jupiter)シリーズです。

カール・ツァイスコピーの「ジュピター8 50mm F2」や、対称型広角レンズとしては最も安価に購入できる部類である「ジュピター12 35mm F2.8」をはじめ、廉価で個性的な銘玉がいっぱい。

日本製以外のオールドレンズを初めて手に入れようと思ったときに最適な選択肢だといえるでしょう。

今回は、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが、ロシアンレンズの定番・ジュピター一族について解説しようと思います。

ぜひあなたもジュピターでオールドレンズの世界に踏み入れてみませんか?

ロシア製オールドレンズの定番・ジュピター

ライカLマウントやM42スクリューマウントのロシア製レンズとしてとても中古で人気が高い、ジュピター(Jupiter)と名付けられたレンズたち。

いったいどのような種類があるのでしょうか?
まず、ジュピターシリーズのなかでも定番のレンズについて紹介します。

ジュピター8 50mm F2

Jupiter-8
写真は黒鏡筒の後期型

マウント ライカLマウント
キエフ(コンタックスマウント)
レンズ構成 3群6枚(ゾナータイプ)
製造工場 KMZ、LZOS
備考 カール・ツァイス ゾナーのコピー

ジュピター8(Jupiter-8)50mm F2は、ロシアンレンズのジュピター一族の中でももっとも人気が高く、大量に製造されたため中古でも手に入れやすいレンズ。

このレンズの最大の特徴。
それが、戦前にカール・ツァイスがコンタックス(レンジファインダーカメラのContax)用に開発したゾナー(Sonnar)5cm F2の完全コピー製品だということです。

完全コピーである理由は、第二次世界大戦でドイツを占領した旧ソ連が、カール・ツァイスの製造設備をそのまま自国に持ち帰って製造し始めたことがルーツであるため。
中身は完全にツァイスのゾナーなのです。

ジュピター8は、1970年代を境に鏡筒のデザインが大きく変更されており、それ以前は軽合金の銀色鏡筒、以降は黒鏡筒となっています。

Jupiter-8

ジュピター8のレンズマウント

Jupiter-8
ライカLマウントのジュピター8

ジュピター8には、ライカLマウントのものと、キエフ(コンタックス)マウントのものがあります。
そもそも、このジュピター8は旧ソ連がコンタックス(Contax)をコピーしたキエフ(Kiev)というレンジファインダーカメラのために製造し始めたものなので、キエフ用が源流。
途中、1950年代なかばから、レンズエレメントの構成は同一のまま、ライカLマウントのレンジファインダーカメラで、旧ソ連では上級機であったゾルキー(Zorki)シリーズ用にコンバートされ製造されるようになりました。

マウントアダプターでジュピター8を使う場合、基本的にはライカLマウントのもののほうがおすすめです。
ライカLマウントのマウントアダプターは廉価なうえ、いくものメーカーから選ぶことが可能。
また、レンジファインダーのフィルムカメラで撮影してみたいと思ったときにも流用が容易です。

いっぽう、キエフ(コンタックス)マウント用のマウントアダプターは、精度の高い、厳密な品質管理のもとで製造されたものは高価です。オークションサイトなどではおそらくキエフのカメラボディからパーツを流用して製造したと思しきマウントアダプターが出回っていますが、出所不明の製品で、正直なところあまりおすすめできません。
ただし、キエフ用は上記の理由からほとんど捨て値で中古を手に入れることが可能です。

ジュピター3 50mm F1.5

No Image

マウント ライカLマウント
キエフ(コンタックスマウント)
レンズ構成 3群7枚(ゾナータイプ)
製造工場 KMZ、ZOMZ
備考 カール・ツァイス ゾナーのコピー

ジュピター3(Jupiter-3)50mm F1.5は、こちらもカール・ツァイスのゾナー(Sonnar)5cm F1.5をコピーして製造されたレンズ。

ジュピター8同様、キエフ(コンタックス)マウントとライカLマウントがありますが、どちらもジュピター8よりも見かけない印象。
中古の値段も、開放値が約1段明るいハイスピードレンズであることもあって、ジュピター8の倍額程度はしています。

このレンズの元となった戦前のコンタックス ゾナー5cm F1.5は、1930年代当時、世界でも随一の開放値が明るいハイスピードレンズとして孤高の存在でした。
そんな伝説の銘玉中の銘玉も、戦後にロシアでコピーされ、いまとなってはとても安価。

当然ながらドイツ製の本物の「ゾナー」よりもずっと安価なので、気軽に戦前の高性能レンズを試すことができますよ。

ジュピター9 85mm F2

ジュピター9(L39)
画像はL39マウント版

マウント ライカLマウント
キエフ(コンタックスマウント)
ZENIT用M39スクリューマウント
M42スクリューマウント
レンズ構成 3群7枚(ゾナータイプ)
製造工場 LZOS
備考 カール・ツァイス ゾナーのコピー

人物を撮るためのポートレートレンズとして、オールドレンズのなかでも随一の描写力を誇る銘玉です。

ジュピター9(Jupiter-9)85mm F2。
こちらもご多分に漏れず、カール・ツァイスのゾナー8.5cm F2のコピー。
レンズ構成もカール・ツァイスのものを受け継いでいるようです。

焦点距離85mmのポートレートレンズといえば、人物撮影の花形としてどのメーカーも高値で取引されているもの。

状態があまり良くなくても中古で数万円してしまうことが普通ですが、オールドレンズであるこのジュピター9なら、状態良好な品が1万円と少しというとてもリーズナブルな金額で入手可能。

描写も、人物を撮ればピントのあった箇所はくっきりと、そして何より、人物の魅力をはっきりと際立たせる至高のボケ。

元々の設計が戦前に遡ることを忘れてしまうような、味わい深く人の心を揺り動かすような美しさを、存分に味わうことができるでしょう。

Jupiter-9

ジュピター9のレンズマウント

さて、そんなジュピター9もまた、他のジュピターレンズ同様、そもそもはコンタックスコピーのキエフ用に製造が始まり、ライカLマウントにコンバートされました。

焦点距離50mm近辺のレンズと異なるのが、一眼レフカメラ用のレンズにも採用されたこと。
中望遠レンズで後玉の位置がフィルム面から離れていたため、そのままの設計でフランジバックの長い一眼レフ用の鏡筒に収めることができたのです。

一眼レフ用のマウントには、初期のロシアの一眼レフカメラ「ZENIT」用のM39スクリューマウント用と、一般的なM42スクリューマウント用が存在。

これから購入する場合、上記のマウントのものの中でも、M42スクリューマウントのものがおすすめだといえるでしょう。

全体の製造数もM42スクリューマウントのものが多かったようで、中古市場でもM42のものが大半な印象です。

M42マウントのジュピター9は絞りが自動絞りではない(一眼レフカメラでの撮影時に絞りが自動で絞り込まれない)ために、かつては不便な印象がありました。
しかし、現代のミラーレス一眼カメラでマウントアダプターで使用する場合には、その設計がむしろメリットとなります(ミラーレス一眼カメラでは実絞りで使用するため)。

ジュピター9は、まさにミラーレス一眼カメラと相性抜群の中望遠オールドレンズだといえるでしょう。

ジュピター12 35mm F2.8

No Image

マウント ライカLマウント
キエフ(コンタックスマウント)
レンズ構成 4群6枚
製造工場 KMZ、LZOS
備考 後玉が大きく張り出す対称型広角レンズ

ジュピター12(Juputer-12)35mm F2.8は、ライカLマウントの廉価な広角レンズとして人気の高い逸品。

最大の特徴が、「対称型広角レンズ」であるということです。

対称型広角レンズとは、レンズの断面図を見たときに前側と後側が対称型になっている構成のレンズのこと。
構造上、レンズの後玉がカメラボディ内部、レンズマウントよりも後側に張り出すため、フィルムカメラの時代に、レンジファインダーカメラ用にしか作ることができないレンズでした。
(ミラーアップして使用する一眼レフ用レンズを除く)

さて、そんな対称型レンズ自体はライカLマウントに多く存在しています。

このジュピター12 35mm F2.8が貴重なのは、他のロシアレンズと同様、とても廉価に入手可能であるということ。
具体的には1万円と少しの金額で購入が可能です。

描写については、設計自体は古いものながら、とてもシャープ、そして、まっすぐなものがまっすぐに写る、対称型ならではの歪曲収差の少ない画を楽しむことができますよ。

なお設計については、カール・ツァイスのビオゴン35mm F2.8を源流としているものの、旧ソ連国内で独自に改良が施されているようです。

マウントはライカLマウントとキエフ(コンタックス)マウント。
キエフマウントの使用時には「外爪」対応のマウントアダプターが必要になるので注意しましょう。

マウントアダプターでの使用時には相性に注意

しかしながら、このジュピター12 35mm F2.8は、マウントアダプターでの使用時にカメラボディとの相性があるため注意が必要です。

後玉が張り出しているため、機種によってはカメラ内部の部品と干渉してしまい、装着ができないのです。

具体的には、SONYのAPSサイズのミラーレス一眼カメラ(NEX-5やNEX-7、α4桁シリーズ等)は使用不可。

いっぽう、フルサイズカメラのα7シリーズは問題なく使用可能です。

また、APS-Cサイズのミラーレス一眼カメラでも、富士フイルムのXシリーズでは問題なく使用可能なようです。

他にもあるジュピター一族

ロシア製のオールドレンズ、ジュピター一族のなかでメジャーなものは、以上の4種類だといえるでしょう。

ですが他にも、以下のようなレンズも存在しています。
ジュピターというコードネームが、旧ソ連製のレンズを幅広くカバーするものであったことがわかります。

Jupiter-6 180mm F2.8
Juputer-11 135mm F4
Juputer-13 125mm F1.5
Juputer-17 52mm F2
Jupiter-21 200mm F4
Jupiter-36 250mm F3.5
Jupiter-37 135mm F3.5
Jupiter-38 75mm F4
Jupiter-100 100mm F2.5

ジュピターレンズの製造工場

さて、旧ソ連製のレンズは計画経済下で国営工場にて製造されていました。

本記事で解説した表にも工場の略称を記載していますが、それぞれ以下のような工場を示しています。

KMZ

クラスノゴルスク機械工場の略。戦利品としてドイツから移転したコンタックスカメラの製造を担当した工場です。
モスクワ近郊に所在。
キリル文字では「КМЗ」。

LZOS

リトカリノ光学硝子工場の略。キリル文字では「ЛЗОС」。
リトカリノもモスクワ近郊の都市名です。

ZOMZ

ザゴルスク光学機械工場。
キリル文字では「ЗОМЗ」。
ザゴルスクはモスクワ州の都市で、現在はセルギエフ・ポサードと呼ばれています。

KOMZ

今回の記事で大きく取り上げたレンズの製造は行っていませんが、KOMZ(カザン光学器械工場)はジュピター11の製造を担当しています。
カザンは現在のロシア連邦を構成する共和国のひとつ、タタールスタン共和国の首都で、人口約110万人(2002年)。

VOMZ

ヴォログダ光学機械工場の略。ジュピターシリーズではジュピター21の製造を担当。
ヴォログダはロシア西部のヴォログダ州の州都です。

LOMO

レニングラード光学器械合同の略、キリル文字では「ЛОМО」。
レニングラードは現在のサンクトペテルブルグ。
ジュピター関係ではジュピター38を担当。
トイカメラの代表格、LOMO LC-Aを製造したことで全世界的に有名な旧ソ連の光学工場です。

ジュピターという名称

この記事で紹介したジュピターというレンズ名は、もちろん「木星」に由来。
元はといえばローマ神話の女神、ユピテルに由来する単語ですが、無神論・唯物主義を国是としていた旧ソ連の製品名であることから、惑星のほうを意識していたと思って間違いないでしょう。

英語表記ではそのまま「jupiter」。
キリル文字では「ЮПИТЕР」です。

またロシア語ではユピテルと発音するようです。

ジュピターでオールドレンズ入門してみませんか?

とても安価に、描写に優れ、しかもドイツに源流を持つオールドレンズが楽しめる。
ロシアレンズはとても魅力的な名玉が揃っています。

オールドレンズに興味を持ったら、ぜひジュピターを手に入れてみませんか?

日本製とは違う、ユーラシアの風漂う描写を味わうことができるかもしれませんよ。

著者紹介:サンライズカメラ

サンライズカメラは、いまでは数少くなってしまった「フィルムカメラ専門店」の使命として、フィルムカメラに関する情報を公開し続けています。 「こんな記事が読みたい」というご要望がありましたら、お気軽にFacebook、Twitter、お問い合わせフォームなどからご連絡ください。カメラ愛好家のみなさん、これからフィルムを始めたいみなさんとお話できることを楽しみに待っています。

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