特別連載ブログ フィルムカメラのある生活

2018.02.09

メオプタ フレクサレット ボヘミアの風薫る二眼レフカメラ

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フレクサレットVI

今回は二眼レフカメラのフレクサレット(Flexaret)について紹介します。

中古フィルムカメラのなかでもとくに人気が高い二眼レフカメラ。
独特の可愛いルックスが魅力ですが、そんな二眼レフカメラのなかでも、フレクサレットはとくにキュートな見た目をしていることで有名です。

ローライフレックス・ローライコードをはじめとしたドイツ製二眼レフとも、ローライを模倣した日本製二眼レフとも似ていない、他のカメラとは違うルックス。
後期の機種で取り入れられたグレーの外装は、一目でフレクサレットだとわかる魅力的なもの。

二眼レフカメラを中古で探すときに、一味違う機種が欲しいなら、フレクサレットがイチオシです。

製造国は旧チェコスロバキア。
東欧製のカメラというと珍しように思えますが、実はチェコスロバキアは戦前から優れた工業力を持っていた地域。
製造元のメオプタ社も、知る人ぞ知る実力派光学メーカーだったのです。

一味違う、キュートな二眼レフカメラ。
ボヘミアの風薫るフレクサレットとは、いったいどんなカメラなのでしょうか?
中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが紹介します。

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フレクサレット(Flexaret)

まず最初に、フレクサレット(Flexaret)とはどんなカメラなのか紹介します。

チェコスロバキア製二眼レフ・フレクサレット

フレクサレットVI

フレクサレット(Flexaret)とは、チェコスロバキアの国営カメラメーカー、メオプタ(Meopta)社が製造した二眼レフカメラです。

チェコスロバキアは、冷戦時代、共産主義側の東側に属していた国。

旧共産圏の中古カメラや中古レンズというと旧ソ連や旧東ドイツのものが有名で人気も高いですが、実はチェコスロバキアでもカメラが作られていたのです。

旧ソ連のチェブラーシカが人気だったり、2003年に公開された映画「グッバイ・レーニン!」で旧東ドイツの文化が注目されたり、旧共産圏の文化や製品のレトロな可愛さが静かな人気を集めている現代。

チェコスロバキアを代表する、旧共産圏ならではの「かわいい」製品こそ、このフレクサレットにほかならないといえるでしょう。

フレクサレットの魅力

フレクサレットVI

そんなフレクサレット(Flexaret)の最大の魅力は、やはり独特のルックス。

同じ東側のカメラでも無骨な旧ソ連製のものとは違う優雅さをもち、それでいて、ドイツ製のカメラとも似ていない、独自のデザインをしている。

どこか柔らかさをたたえた優美なデザインは、見ていて飽きのこない優れたもの。
さまざまな中古フィルムカメラのなかでも、とくにデザイン性にすぐれたものだといえるのではないでしょうか。

チェコ製レンズのクラシカルな描写は、日本で使っても東欧の風を感じられるような空気感あふれるもの。
二眼レフカメラならではの「ましかく」画面とあいまって、雰囲気あふれる写真を撮ることができますよ。

フレクサレットVI

また操作性も良好。
フレクサレットの主要モデルの特徴として、レンズ下にある、左右に動くシーソレーバーでピントを合わせる操作が挙げられます。
ローライのように側面ノブで合わせるよりも、直感的かつスピーディにピント合わせが可能な便利な機構です。

フレクサレットとチェコ製カメラ

フレクサレットVI

さて、そんなフレクサレット(Flexaret)はどんな経緯で誕生したのでしょうか。

実はチェコスロバキアは、戦前、非常に産業が発達していた地域でした。
戦前の時点で世界有数の産業国のひとつで、フレクサレットを製造したメオプタ社の前身、オプティコテクナ(Optikotechna)の設立も、そのような工業的下地があってこそのことでした。

ところが、戦後、チェコスロバキアが旧ソ連の影響下で共産主義国家になることで、チェコスロバキアのカメラの命運が大きく左右されてしまうこととなります。

1946年に国有企業となり解消されたメオプタ(Meopta)社。
メオプタ社の製造するカメラは基本的に大衆機種のみに限定されることになってしまうのです。

旧共産圏では、国ごと、会社ごとに、製造する製品のジャンルが決められてしまっていました。
カメラやレンズ、光学機器の場合、上級機種は基本的にソ連や東ドイツのメーカーだけが製造するように割り振られました。

基本的に民生用の大衆機種だけを製造することとなったメオプタ社。

この記事で紹介しているフレクサレットや、35mmカメラのオペマ(Opema)など、チェコスロバキアの技術力の粋を集め、いまでも中古で人気の高い魅力的なカメラを製造しました。

しかし、どんなに頑張っても旧共産圏ではチェコスロバキア製のカメラは傍流。
旧共産圏では、あくまでも地味な縁の下の力持ちに徹することになってしまったのです。

第二次世界大戦、そして戦後の冷戦を通じて大国のはざまで翻弄されたチェコスロバキア。
チェコスロバキアのカメラもまた、同じように歴史に翻弄された存在だったのです。

フレクサレットVI

フレクサレットが影響を与えた日本製カメラ

さて、そんなフレクサレット(Flexaret)は、実は日本製の有名な二眼レフカメラに大きな影響を与えています。

それが、ミノルタの二眼レフカメラ、ミノルタコードやミノルタオートコード。
とくに、ミノルタオートコードは二眼レフカメラのなかでも中古で非常に人気が高い機種のひとつです。

ミノルタ製二眼レフがとくに影響を受けたのがフレクサレットIII型(3型)。
とくに「ミノルタコード」では、フレクサレットIII型の特徴であるボディ側面でのレバー巻き上げをそのままコピー。

ミノルタの二眼レフカメラもピント合わせをレンズ下のレバーで行うのが特徴ですが、実はこれも、フレクサレットの機構を模倣したものなのです。

ミノルタオートコード
ミノルタ二眼レフの完成形、オートコードでも、シーソー式ピント合わせは受け継がれている。

ほかにも、ボディ側面のロックを引っ張って裏蓋を開閉することなど、ミノルタの二眼レフカメラは、非常に多くの特徴をフレクサレットから受け継いでいます。

フレクサレット各機種紹介

さて、それではフレクサレットのそれぞれの機種にはどんな特徴があるのでしょうか。

I型からVII型まで存在するフレクサレット。
それぞれの特徴を解説します。

フレクサレットI

No Image

テイクレンズ Mirar 7.5cm F4.5
ビューレンズ Mirar 7.5cm F4.5
シャッター プロンターII
バルブ、1秒〜1/150秒
シャッターチャージ 手動
巻き上げ ノブ・赤窓式
自動巻き止め・多重露光防止機構ともになし
製造年 1939年〜

1939年に製造が開始した初代フレクサレット(flexaret I)。
ですが独自の設計ではなく、同じくチェコ製のカメラ、Optiflex(オプティフレックス)とFlexette(フレクセッテ)という前身となる機種が存在していたようです。

初代フレクサレットが製造されるようになった経緯は、第二次世界大戦へと向かう世界史と密接に関連しています。
チェコスロバキアのズデーデン地方をナチス・ドイツに併合することを決めた「ミュンヘン会談」。
その際にチェコスロバキアでは軍需産業を行うことも禁止されてしまい、フレクサレットの製造元のオプティコテクナ社は、仕事を失うことになってしまいました。
そのため、民間向けのカメラに活路を求め、フレクサレットの生産に乗り出すこととなったのです。

フレクサレットIは、クラシックカメラとして見ても少々スペックは不足気味。
中古で購入する場合、実用というよりもコレクターズアイテムの色が濃いかもしれません。

フレクサレットII

No Image

テイクレンズ Mirar 80mm F4.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3
シャッター バルブ、1秒〜1/200秒
(最高速1/500秒のコンパーラピッド装備などバリエーションあり)
シャッターチャージ 手動
巻き上げ ノブ・赤窓式
自動巻き止め・多重露光防止機構ともになし
製造年 1946年〜

戦後になり独自の設計でリニューアルされたフレクサレットII(Flexaret II)。
実質的にはフレクサレットの歴史はここに始まるといっても間違いではないでしょう。

フレクサレットの特徴である、ボディ前面のシーソー式フォーカスレバーが取り入れられたのはこのフレクサレットII型から。

ただし、自動巻き止めのない赤窓式のため、使用時には二重写しを行わないよう注意が必要です。

廉価版としてIIa型も存在します。

フレクサレットIII

フレクサレットIII
フレクサレットIII(筆者私物)

テイクレンズ Mirar 80mm F3.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3
シャッター コンパーラピッド バルブ、1秒〜1/500秒(III型)
プロンターS バルブ、1秒〜1/300秒(IIIa型)
(バリエーションあり)
シャッターチャージ 手動
巻き上げ レバー式、自動巻き止め
多重露光防止機構はなし
製造年 1948年〜(フレクサレットIII)
1951年〜(フレクサレットIIIa)

フレクサレットIII(Flexaret III)は、側面のレバー巻き上げが特徴の機種。
自動巻き止めがついたため、中古で購入する場合にはこの機種以降が実用的だといえるでしょう。
シャッターの違いでIII型とIIIa型が存在。

ミノルタコードの元となったのがこのIII型。
レバー巻き上げのフレクサレットはこのIII型限りなのですが、その特徴はミノルタの二眼レフに受け継がれていくこととなります。

この機種までは、レンズは3群3枚のトリプレットが採用されています。

フレクサレットIV

No Image

テイクレンズ Belar 80mm F3.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3
シャッター プロンターSVSまたはMETAX
バルブ、1秒〜1/400秒
シャッターチャージ 手動
巻き上げ ノブ式、自動巻き止め
多重露光防止機構はなし
製造年 1955年〜

フレクサレットIV型(Flexaret IV)では巻き上げがノブに戻りました。

レンズはこれ以降、3群4枚のテッサータイプとなります。

IV型は、シャッターをボディ前面のレバーで切るのが特徴です。

35mmフィルムでの撮影に対応したIVa型も存在します。

フレクサレットV

No Image

テイクレンズ Belar 80mm F3.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3
シャッター プロンターSVSまたはMETAX
バルブ、1秒〜1/400秒
シャッターチャージ 手動
巻き上げ ノブ式、自動巻き止め
多重露光防止機構はなし
製造年 1958年〜

1958年のフレクサレットV型(Flexaret V)では、シャッターがボディ前面のボタン式に。
見た目も次のVI型同様のモダンなものにリニューアルされました。

フォーカシングレバーも大型化。

35mmフィルムでの撮影に対応したVa型も存在します。

フレクサレットVI

フレクサレットVI

テイクレンズ Belar 80mm F3.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3(前期)
Belar 80mm F3.5(後期)
シャッター プロンターSVSまたはMETAX
バルブ、1秒〜1/400秒
シャッターチャージ セルフコッキング
巻き上げ ノブ式、自動巻き止め、多重露光防止
製造年 1961年〜

フレクサレットの完成形にして中古でもっともおすすめできる機種。

それがこの、フレクサレットVI(Flexaret VI)です。

機構上の完成度が非常に向上しており、シャッターは巻き上げと連動したセルフコッキングに。
多重露光防止機構も装備。

そして最大の特徴が、フレクサレットの代名詞であるグレーの外装。
実はこのVI型(6型)、初期は通常の黒い貼り革で、グレーになったのは途中から。

他のどんなカメラとも似ていない優美なルックスを味わえます。

フレクサレットVI

作りも比較的よいため、次のVII型(7型)よりも断然おすすめです。

フレクサレット スタンダード

No Image

テイクレンズ Belar 80mm F3.5
ビューレンズ Meopta Anastigmat 80mm F3?
シャッター プロンターSVSまたはMETAX
バルブ、1秒〜1/400秒
シャッターチャージ 手動
巻き上げ ノブ、赤窓式
多重露光防止機構なし
製造年 1965年〜

フレクサレットスタンダート(Flexaret Standard)は、フレクサレットVI型からセルフコッキングや自動巻き止めを省き赤窓式とした廉価版です。
マスク装着により645判での撮影に対応しています。

簡易な構造のため、中古でも壊れる場所がなく通好みの機種だといえます。

フレクサレットVII

No Image

テイクレンズ Belar 80mm F3.5
ビューレンズ Belar 80mm F3.5
シャッター PRESTOR
バルブ、1秒〜1/500秒
シャッターチャージ セルフコッキング
巻き上げ ノブ式、自動巻き止め、多重露光防止
製造年 1963年?〜

フレクサレットVII(Flexaret VII)は基本的にはフレクサレットVIのマイナーチェンジ。
シャッターが異なるほか、マスク装着で645判に対応。

外観もフレクサレットVIゆずりのグレーです。

ところがこのVII型は、非常に壊れやすいことでも知られています。
とくに1960年代も後半になると、旧共産圏は経済的に停滞するようになります。
使用する素材の質が低下し、製造時の加工精度も悪化。
とくに1968年の「プラハの春」以降に製造されたものはとても状態が悪いようです。

VII型も見た目は魅力的ですが、実際に写真を撮ることを考えるとVI型を選んだほうが無難です。

VII型には、コストダウンのマイナーチェンジが行われたVIIa型も存在し、多重露光レバーが省かれています。

フレクサレット中古購入時のポイント

さて、それではフレクサレットを中古で探すときには、いったいどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。

状態が良い時代のものがおすすめ

フレクサレットは旧共産圏のカメラ。

ロシアカメラにもいえることですが、時代が後になればなるほど、加工精度や素材の質は低下していきます。

上にも書いたとおり、中古購入時にはとくに質の低下が著しいVII型は避けたほうが無難です。

レンズのキズをチェック

フレクサレットの中古はレンズに傷があるものが多いことで有名です。

中古を買う際には、レンズ、とくに下側のテイクレンズに傷がついていないかしっかりとチェックするようにしましょう。

他人と違う二眼レフならフレクサレットがおすすめ

チェコスロバキア製という珍しいフィルムカメラ、フレクサレット。

中古二眼レフカメラのなかでもとくに魅力的な機種のひとつなので、初めての中判カメラ、初めての二眼レフカメラとしてもおすすめできるといえるでしょう。

ぜひ、東欧からやってきたフレクサレットをあなたの相棒にしてくださいね。

著者紹介:サンライズカメラ

サンライズカメラは、いまでは数少くなってしまった「フィルムカメラ専門店」の使命として、フィルムカメラに関する情報を公開し続けています。 「こんな記事が読みたい」というご要望がありましたら、お気軽にFacebook、Twitter、お問い合わせフォームなどからご連絡ください。カメラ愛好家のみなさん、これからフィルムを始めたいみなさんとお話できることを楽しみに待っています。

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